【東十条】秋が随所に-食堂あいそのワイン会【3回目】

「このお店は季節ごとに暖簾を変えるんだよ」

と、初めてお店を訪ねるときの道すがら、このお店を紹介してくれた友人が私に向かって教えてくれました。それからお店に伺う度に、なんだかそわそわと楽しみな気持ちで暖簾が変わるのを待っていた私。すると、

あいその女将あびさんのツイート。あびさんは夏がお好きなんですね。ワイン会が8月の29日だったので、無事変わった暖簾を実際に見ることができました。

19時からのワイン会、5分遅れで到着するとそこにはもう私達以外のお客さんがガージェリービールのグラスを傾け談笑しており、大将は前菜の盛り付けの最中でした。席に着き、私もガージェリービールを注文。あいそに来たらガージェリーを飲まなくちゃ!

ワイン会は5,000円でお店セレクトのワイン5杯、お料理5品という内容ですが、それ以外の追加オーダーは自由なので、最初の一杯をビールにされる方も多いでのす。

食堂あいそのワイン会【本日のお品書き】

おしながきには秋刀魚やイチジクなどの秋の味覚が…

今回もワインは前回とも初回とも被りを見せません。シャルドネの泡、黒ぶどうの白ワイン、ブレンド用のブドウ・ベリーアリカントA、リースリング…今回も多様なラインナップです。

お食事の方は前菜には夏野菜を用いつつも、秋刀魚、イチジク、鴨など秋の味覚の名前が連なり季節感満載。〆の握りってもしかして…。

【1杯目】胎内高原ワイナリー / ヴァン・ペティヤン 2016

 

エチケットのセンス…!少し白濁しており、たきたてのおもちのような香りと乳酸菌のような酸が感じられました。まさしく「生まれたて!」というような、澄み切ってないピュアさ。お料理と合わせることで味わいがどんどん変化していきます。

左から、さつまいものライム煮・もずくの寒天寄せ・えいひれスモーク・新レンコンのきんぴら・冬瓜の梅肉のせ

前菜もより取り見取り。涼やかな流線形の器にちょこんちょこんと愛らしく盛られています。

面白いな、と思ったのはさつまいものライム煮。前回までレモン煮だったのですが、ライムの尖った酸味と皮の苦さを打ち砕くアーモンドの歯ごたえ、それらを受け止めるさつまいものほろあまさと柔らかさ、この【コク、酸、苦味】がお料理と合わせると段々奥深くなっていくヴァン・ペティヤンのバランスと酷似してるのです。ライム煮はワインのそれを激しくした感じですね。驚きました。

新レンコンのきんぴらにはアーモンドスライスと少量のクミンが、まったりとした味わいのエイヒレスモークには粒マスタードが乗せられていて、毎回思うのですが、あいそのお料理は何を頂いても舌の上で宝探しをしているような、おいしさと共に楽しさも感じられるエンターテイメント性がファンの多い理由かなとも思いました。

一品目から悦に入っていると、「器に乗りきらなかったので別でお出ししますね」と声掛けされていたとうもろこし豆腐が、なんと椀種になってやってきます。

こ・の・と・う・も・ろ・こ・し・ど・う・ふ・が…!

思わず立ち上がって拍手したいくらい。他のお客様からも絶賛されておりました。とにもかくにも、舌触りが抜群にいい。とてつもなくなめらか&クリーミーな舌ざわりを、ふわりと包み込むようなとうもろこしの独特の甘さがもう、なんていうか、筆舌に尽くし難い。幸福の味とでもいうのでしょうか。商品化されスーパーに並ぶようなことがあったら一丁400円でも買います。

【2杯目】タケダワイナリー / ブラン・ド・ノワール樽熟成

フランス語で直訳すると“黒の白”という意味になる不思議なワイン。でも意味が分かると納得です。黒は黒ぶどう、白は白ワインのこと。そう、黒ぶどうでつくられた白ワインなんですね。ちなみに、シャンパンにも黒ぶどうだけでつくられるものがあり、それらもこのワインの名前と同じく、ブラン・ド・ノワールと呼ばれます。

何とも言えない美しい色。甘く熟れたルビーグレープフルーツの様なロゼに近い色合いです。香りもロゼワインのようで、甘くやわらかな華やかさが鼻孔をくすぐります。温度が上がるにつれ黒ぶどうの皮のほろにがさが顔を見せ始め、最後にはじわっとした旨味が口に広がり好みの味に。

こちらのワインに合わせるのは秋刀魚の炙り焼き。秋刀魚の脂がパリパリの皮に波の煌めきのように浮き出ている…。おいしくないわけがないのです。添えられたトマトのみぞれおろしは本日のMVP。「これだけでお酒が飲める」とこの日居合わせたお客様が口々に発しておりました。同意。

【3杯目】塩山洋酒醸造 / ベリーアリカント2016

アルコール度数の強そうなキュッとした香り。

色は濃く鮮やかなボルドーでベルベットのような美しい赤色。エチケットに描かれた女性の眼差しから、“日本といえばサムライ”という風に、ヨーロッパを知らない人間が想像するヨーロッパ・異国といったものを思い起こさせる。注がれたグラスに視線を戻し、美しいボルドー色にまた溜息。

重いものでぎゅっとうまさを潰したような、口の中でさらに下に沈んでいく、旨い渋みとカカオのような苦味を感じます。まるでビターチョコレートのような長引く余韻はワインの色と少し乖離した印象。

ここで揚げ物。薄い衣と熱で甘さがより強く感じられるイチジクは、熟れる手前の、少女も老いも身に纏い、中から芳しくなる絶妙な頃合い。ワインを口に含むと、浮き上がるイチジクの甘さを引き摺り沈める強い力、イチジクが本来持っている暗さを後味の余韻の中に引っ張り出すような力強さを感じます。

ズッキーニは果実のようなみずみずしさで、眼前にはセーラー服を着た素足の女子高生と学校の水色のプールの水面。うら若い、もう戻れることはない世代に対する憧憬。実りの秋を前にして、夏の青々とした風景に何故か懐かしさを覚えるような。

舞茸は大木の貫禄、色褪せてるように見え、大事なところは色褪せず、おいしいところがどんとダイレクトに守られている感じ。

クミン塩は香りが強すぎるかなとも思いましたが、お皿全体に削りかけられたパルミジャーノとタッグを組んで、まとまりを生んでおりました。あっぱれ。ストーリーがぐるぐる巡って、このお皿の時が今回は一番楽しかったです。

【4杯目】蔵王ウッディファーム&ワイナリー / カベルネ・ソーヴィニョン

いよいよワイン会も佳境に入ってまいりました。4杯目はこちらのカベルネ・ソーヴィニョン。絵本の挿絵の様なポップなエチケットが可愛らしいですね。そんなエチケットの印象とは裏腹に、しっかりとしたタンニンが感じられる仕上がりですが、甘味もあり、ワイン単体で見た時の全体的なバランスと親しみやすさはこちらが一番でした。カベルネ・ソーヴィニョンはワインらしい王道のおいしさがありますね。

さてそんなワインと合わせるのはふろふき大根と合鴨の甲州煮。甲州煮とはぶどう煮のことで、ぶどうが豊作な山梨ならではのお料理だそう。ぶどうから作られるワインで煮たものも甲州煮というそうです。

まずは鴨だけ…う~んやわらかい。これだけで、もう充分。そしてワインで煮てるのでワインに合わないわけがないですよね(笑)

でも、薄味で冷たく仕立てた大根の水分が鴨肉のやわらかな甘味と凝縮した旨味をジュースのようにみずみずしく口の中に溢れさせ、ツマの苦みがプロポーションを整えるという、単品以上の驚きとおいしさを見せてくれるのが食堂あいそ。完成されていました。

【5杯目】丹波ワイン / 鳥居野 リースリング

私の大好きなリースリング。こちらのは、香りがすっとして清涼感がありました。味もスッキリしているのですが、リースリングらしい優雅な甘さも微かに感じられます。

〆のお寿司を握るのは大将のお父様。宮城で寿司板前をされていたお父様の手つきは何故か見入ってしまうものがありました。

モダンな寿司ゲタ風のお皿と、マグロの肌、そして青紅葉が美しい盛り付け。

甘いのにしっかりと出汁の味もする厚焼き玉子

お寿司に関してはメモが残っておらず(きっとおいしさと酔いで書き忘れた)適当なことは書けませんので割愛しますが、ここで嬉しいお知らせが配られます。

2017年9月1日から食堂あいそで寿司ランチスタート

平日限定12:00~14:00の間、限定10食のレアランチ!ということなので、東十条でお寿司を食べたくなった皆さま、ぜひ足を運んでみてくださいね。

ちなみに9/1(金)~9/15(金)まで、食堂あいそのランチと共にutacoが企画している唄×展示×おいしいもののイベント「utacoのライブともぐもぐ展」が食堂あいそで開催されます。そちらもぜひ御贔屓にしてください。

宣伝を挟んでしまい恐縮ですが、ワイン会のメニューはこれで制覇。ぼちぼちお会計というところで聞き逃せない一声が投下されます。

「あびさん、今日のプリンはなんですか~?」

プリン…!プリンとな!

「今日はチャイのプリンです」

しかもチャイ!

いただきました。さらにこの後お抹茶までいただいてしまい至れり尽くせり。

まとめ

月に1回月末の火・木どちらかに開かれているワイン会ですが、参加したい!という方は早めの連絡が吉です。次回は2017年9月28日

食堂あいそのFacebookTwitterも要チェックですよ♪

食堂あいそ
   〒114-0032 東京都北区中十条2-9-15
   (JR東十条駅 南口より徒歩2分)
  〔月~金〕12:00~14:00 / 18:00~23:30
   〔 土 〕18:00~23:30
   〔 日 〕16:00~21:00

 

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