先日のチャイコンで2位を勝ち取り、一躍国内でも大人気となった藤田真央さん。
わたし自身もチャイコンをきっかけに藤田真央さんの存在を知ったのですが、スマホ越しにも関わらず、ファイナルの演奏は一時も目が離せない素晴らしい演奏で、ファンになってしまいました。
その後のコンサートやリサイタルのチケットはもちろん争奪戦必須。そんな中、川崎ミューザの日フィルとの公演のチケットがGETできたので行ってまいりました!
場所は川崎ミューザシンフォニーホール
この日公演が行われたミューザ川崎シンフォニーホールは、JR川崎駅直結のコンサートホール。2019年上半期に改修工事を行ったばかりです。
フェスタサマーミューザKAWASAKI2019というイベントの真っ最中。そういえばいつぞやもこの時期に足を運んだなあ。今年で15年目の開催だそうです。
本日の席は3階席L3-17。B席だったので、運よく手元が見えれば…と思いましたが、結論から言えばばっちりでした…!
私もチャイコンの発表の後にチケットを取ったので、もうほとんど席が残ってなかったのですが、これは日頃の行いの成果としかいいようがない。神様ありがとう。
炎のマエストロ × 若手ピアニストの熱演
炎のマエストロ + 若手ピアニストの熱演と題された今回の公演。炎のマエストロとはいわずもがな小林研一郎氏です。
曲目はチャイコフスキー:ピアノ協奏曲第一番 変ロ長調 作品23と、ベートーヴェン:交響曲第7番 イ長調 作品92。
どちらの曲も、特に冒頭部分はクラシックファンでなくても耳にしたことがあるメジャー曲。ベートーヴェンの7番はのだめカンタービレのOPにも使われていましたね。
この日はテレビ局の撮影も入っていたそうで、こんな張り紙が。
愛されキャラだし、テレビでとりあげられたらさらに人気がでるだろうなぁ…それでピアノを始めたり、クラシック音楽を聴いてみようかなという人が増えたらとっても嬉しいですね。
それでは、しばし音楽の旅へ(スマホのスイッチOFF)。
チャイコフスキー:ピアノ協奏曲第一番 変ロ長調 作品23の感想
どんな曲か知りたい方はこちらをどうぞ。
いや、もう
今まで聴いてきた演奏はなんだったのかな……
と思うくらい、神がかっていました。
ピアノってこんなに多彩な音がだせる楽器なんだ!と改めて思い知りました。1楽章の途中、完全にロシアの大地、草原のイメージがふーっと脳裏に流れてきた時には、思わず鳥肌が。
ダイナミクス(強弱)の幅が圧倒的で、特にピアニッシモの明瞭・均一・かつやわらかいあの音の粒たちは、花びらが水面にふれるような繊細さもあり、その抜きんでた技術力の高さに驚きました。
一時世間を騒がせた佐村河内守氏のゴーストライターとして作曲した新垣隆氏の交響曲第一番<>と第二番。同じく第14回のチャイコンで2位を獲得したソン・ヨルムさんの演奏を聴きに行ったことがあり、その時も鳥肌が立ちましたが、彼女の演奏はどちらかといえば憑依型。作品に没入し、一枚一枚魂をめくり暴いていくような、一種悪魔的なものを感じたがための鳥肌でした。
藤田真央さんは、彼自身の中に超自然的なものが存在し、それを喜びとして発散しているような、彼自身の中に、無邪気で人々にとっては脅威にもなる自然を操る神様が住んでいるような、そんな演奏でした。
完璧という言葉を用いると、それは修練や計算によって作り得られたもののような意味合いが含まれますが、真央さんのそれは自然的です。自分が鳴らす以外の音、空気、呼吸、そういったものと呼応し、常におかれた環境の中で自分がどうあるか、というふるまいで、全体を巻き込んでその時にしか作れない音楽をつくるということに喜びを感じているように見えました。
風が吹くから枝がしなる、雨が降ったら土が濡れる、花が咲くから虫が集まるというような自然の光景。後半、マエストロが根を張る大木で、オーケストラが風、真央さんが木々に茂枝葉のような一体感に見せられた時間は至福そのものでした。
ステージの上で他者と音楽をつくりあげるという本質的で刹那的な喜びをこんなに雄大に表現できる人は、今の日本においては彼以外いないのではないかと思いました。そして何より、こういったことは傑出したテクニックがなければ、成し遂げられないものです。
鳴りやまない拍手の中、マエストロに場を収めてもらい、戸惑いながらも感謝を述べた真央さん。アンコールはリストの愛の夢。
静かで美しい調べが始まったとたん、会場のざわめきもすっと落ち着き、水面がきらめくような音色の中で描かれるメロディは水の流れをなぞるたおやかな稜線に魅入られました。
ベートーヴェン:交響曲第7番 イ長調 作品92
のだめカンタービレのオープニングとしても有名な曲ですね。正直真央さんの演奏の後では物足りなさが否めず、幸福なお昼寝タイム…面白いなと思ったのは、真央さんの音楽的表現が、オーケストラのそれにも影響しているなと感じられたこと。また、オーボエの方の音色が素晴らしかったです。
2部のアンコールは日フィルの十八番、ダニーボーイ。
ケルティック・ウーマン ver. 美しい~。オーケストラver.も重厚なチェロパートから始まり、美しかったですよ。
素敵な時間をありがとうございました!
今日の鑑賞データ
ホール:川崎ミューザシンフォニーホール
2019年上半期の改装が終わったばかり
座席:B席 3F L3-17
3階席最前列。ピアニストの手元が見えて音響も良好
チケット:3000円(一般)