【国立】レストラン“台形”は美術館!?絵画のような料理が食べられるコース体験のお話。

「台形」。もしかしたら、その名前を聞いただけで、「あ」と思う方もいらっしゃるかもしれません。Twitter上で1~2か月先の予約枠をオープンするとすぐさま満席になってしまう人気店。JR中央線「国立」駅から徒歩10分にあるその「台形」という名のレストランで、今回は素敵なコース料理を体験してきました。

※うっかりカメラを忘れてしまい、iPhoneで写真を撮ったら、何故かほとんどボヤけたりブレたりしています‥‥。本来使いたかった場所に容赦なくその写真たちを使っていくので、どうぞ笑ってやってください。

雨の土曜日。コロナで人もまばらな電車を乗り継ぎ、国立駅を降ります。旧駅舎の建物が残る南口を出て、並木道を正面に右手にある道をひたすら直進していくと、ぼうっとあたたかな光が漏れだす建物が左手に見えます。

台形の入口の前で戸を叩くさやかちゃん
台形の戸を叩くさやかちゃん


今回ご一緒してくれた友人のさやかちゃん。「田圃風」という焼き菓子アトリエを営む傍ら、建築やイラストのお仕事もこなす才能あふれる女の子です。5月に予約した時には、まさか今(7月)になっても外出が憚られるような状態になっているとは思いませんでしたが、久しぶりに逢えた喜びと安堵の気持ちをシェアしたところで中へ。

国立にある隠れ家レストラン「台形」
台形の店内

少し薄暗い店内。セージのような、スッとした香りに心が落ち着きます(サンタ・マリア・ノヴェッラのポプリだそうです)。美しいフォルムのカトラリーがセットされたテーブルに腰掛け、キョロキョロと中を見回してしまいます。

小さな考古博物館のような店内

組数でいうと4組ほどしか入れない小さな店内に、昔と今が交錯するような不思議な雰囲気が充満しています。考古博物館の中にいるような展示物にしばし目を奪われていると、程なくして奥からご主人がコースの説明をしに来てくださいました。

台形のメニュー

台形は、夜はコースのみの営業をしています。スープ~デザートまで6皿のメニューですが、メニューの記載の仕方がユニークで、そこにはそのお皿に使われる材料のみが書かれています。

ワインについても「白 / 赤 / 琥珀」という色のみが書かれ、詳細は店員さんとお話ししながら決めていくスタイル。最初の一皿目に合わせて、わたしは微発砲のシードルのような白ワインをいただきました。

台形のワインとアイスティー

お友達はお酒が飲めないのでアイスティーで。グラスも素敵です。

台形の最初の一皿目のスープ

最初の一皿目はスープ。薄いイエローの海はビシソワーズ。口に含んだ瞬間はころんと丸いのに、後からすーっとクミンやカルダモンの香りが追いかけて来て、草原を走る角のない鹿が見えました。

小さな緑の島はパセリのポタージュ。レモンとパセリの苦みが爽やか。トマトの角切りのように見えるのはなんとスイカ!散らしてある緑はきゅうりです。

大胆だけど、絵画の様な、なくてはならないアクセントとしてそこにある味の組み立て方に、ず~っと食べていたくなるほど最初から虜になってしまいます。

台形2皿目夏のタルタル

生ハム、マンゴー、ズッキーニ、そら豆を、グレープフルーツの味がするクリアピンクのジュレで固めた「夏の夜のサラダ」。

上にかかっているパイナップルソースとお皿に描かれた花束をリボンと一緒に留めるようにして置かれたアプリコットと黒コショウのソース。

口に含んだ時の透明感たるやいなや。真っ青なプールにくっきりと浮かぶ白い水の波紋、その上でひたすらにゆらゆらと夏の光を浴びながらたゆたうような爽快感を感じます。

アプリコットのソースを絡めると、風にのって消えていきそうなその味わいに重みを加えるように、素材の輪郭が際立ちます。

楽しんでいるとあっという間に2皿目もなくなり‥‥

台形3皿目 なすの中華あん包み

3皿目、なすのなかに、ひき肉やキクラゲ、道明寺粉でつくられた餡が入っている遺跡っぽい一品。

台形 なすに縦に切れ目を入れてみた

もはやこの写真は本当に何を撮りたかったのか謎すぎると思いますが、中の餡を見せたかったのです。この写真を撮るために、なすの繊維に沿って切れ目を入れたのですが、その時に立ち上がる白いケムリも遺跡っぽかった。

ソースは貝柱と浅利で滋味深く、真ん中に散らされた生の山椒の香りが鼻をくすぐった瞬間、兵馬俑だ!もしくはラピュタ。

台形の琥珀ワイン(ジョージアのオレンジワイン)

遺跡探検の前に、素材から想像して選んでおいた琥珀ワインがすごくよく合う。琥珀ワインというネーミングも素敵。アンバーより琥珀の方が響きが綺麗~。

オレンジワイン、マイブームなので嬉しい。世界的にも流行っていますよね。特にジョージアのオレンジワインはオレンジワインの元祖!とも言えるので、台形さんに来たらぜひ飲んでみたかったのです。

オレンジワインは、(普通取り除く)皮や枝ごと白ブドウを醸すとこのような色になります。ジョージアでは、クレムリという素焼きの壺で作られるオレンジワインが800年前からあったそうです。歴史の重み‥‥!ブドウはルカツィテリ。ジョージアって単語の響きが可愛い‥‥。

食べ終わった後のお皿

食べ終わると、デンジャラスな遺跡探検の跡に持ち帰ってこれた唯一の真理のような面持ちで、確かにこの世の真理のような文面がお皿に書かれておりました。

台形のラビオリ

折り返し地点となる4皿目。そして聴こえるクライマックスへの足音。なんだか寂しい。でもTwitterで見てからずーーーーーーーーーっと食べてみたかったラビオリ!胸が高鳴ります。

手打ちの厚めのもちもちとしたラビオリに、軽めのビーフシチューのようなソース、ゴルゴンゾーラ、ディルの香りが次々と畳み掛けてきてノックアウト。

ここで赤ワインを一杯頼んでさらなる悦へ。

食もお酒も進み、友達のお話も佳境‥‥というところで、ご主人から「次の料理がオーブンを使った料理で、後3分ほどでお出しできるのですが」とのことわりが。グッドタイミング!

台形白いもちもちした何か

そして運ばれてきた、瀟洒な帽子を被った貴婦人のような佇まいの一皿。えっナニコレナニコレと驚きを隠せない私たちに、ご主人が説明を入れてくれます。

台形最後の一皿アップ

マッシュルーム、チェダーチーズ、トビッコ、塩漬けのケイパー、あしらいにディル、まんまるは白玉粉で餡をくるんで焼いたもの、ソースはヨーグルトソース‥‥。

美しい肌色を表現する時に、肌の色とは正反対の青や緑を使うことがあるように、もはや材料は一要素でしかないということを分からせるに相応しいラインナップ。

白玉粉を焼くっていう発想がまずすごいのですが、それによって得られる食感がまた驚きで‥‥表面がシャクッていうんですよ!カキ氷みたいな、霜柱を踏んだ時みたいな音がして、これがやみつきになってしまう。

全てを口に入れて噛み締めていると、材料は突飛なんだけどだんだんと、懐かしいような、そんな味に帰結して、さやかちゃんとふたりで、「これは日本人で嫌いな人はいないであろう味」という結論に至りました。

もう一度食べたい!

台形 コース デザート
〆のデザート

そしてあっという間にデザートタイム。最後に食後酒として勧められていた、「夏の茜」という名前の梅のコーディアルを一緒にいただきました。

梅の果肉をすりおろしたような食感と香りがとっても心地よいアルコールドリンク。瓶詰して売ってもらいたいくらいおいしかった!コーディアルは滋養強壮作用のある飲み物のことをいうそうです。

台形のデザート別アングル

食後の甘いものは食後酒で十分くらいのわたしですが、白ワインのジュレやパイナップルなどを使った甘さ控えめのさっぱりしたデザートは、コースの〆にふさわしい清涼感をもたらしてくれます。塩漬けの山椒の実がよきアクセントになっていました。

最後にはシェフ(奥様)とご主人と少し歓談。お二人ともとても人柄がよく、癒されました。コースの内容が季節ごとに変わるということで、次の季節の訪問を約束して、お店を後に。

先日、4周年を迎えられた台形さん。予約を取るのがなかなか難しいお店ではありますが、ぜひ一度、絵画のようなお料理を体験されてみてください!

営業時間や予約の空き状況などの最新情報は、台形さんのTwitterで確認するのがオススメです。