【今日の酒】 #7 日日是好日をもう一度見たい理由 「映画館のハイボール」

#7 「映画館のハイボール」

新宿ピカデリーで、日日是好日を見てきました。

二十四節気に合わせて、映画なのに本のページをぱらりぱらりと捲るように進んでいく演出に気づいたら100分。主人公の典子さんがお茶を始めてからの24年間が、茶室の四季とともにぎゅっと詰めこまれた100分は、映像美と共に精神の機微まで繊細に映し出しされていて、既にもう一度見に行きたい。

ピアノやギターを弾いていると、「手が勝手に動く」という現象がたまに起こる。それが起こっている時は、静かな波の表面をぴったりとくっついて滑るような感覚で、頭の一部はすごくひんやりとしている。自分がやっていることをほんのちょっと離れた所から見ているもう一つの眼があるような。至極冷静な状態であるともいえるのに、終わった後は体中の血がいつもよりずっと速く熱く流れていることに気づく。

それは既に経験のある人にとっては容易に共有できることかもしれないけれど、プレイヤーでない人には、正直なんと説明していいか、分からない。

前半、典子さんがこの「手が勝手に動く」状態でお点前の流れを習得するシーンがある。演技で、映像で、こんなにもうまく、再現できるのかと驚嘆した。開いた口が塞がらないとはまさしくこのことだなと思った。

観客を感情移入させる映画は多々あるけれど、表現物として発露させたもので感覚の共有を図ることができる映画は中々ないと思う。

また、お茶を通して段々と典子さんの感覚が研ぎ澄まされていく描写も見事だったなと思う。劣等感や喪失感など、マイナスとして捉えられがちな感情も透き通った色で演技する黒木華さんも印象的だった。

樹木希林さんの遺作でもあるこの映画、希林さんは自分の死期が近いことを分かっていて臨んだんだなと思う。台詞の端々にそれが滲み出ていて、涙が出てきた。全身をガンで侵される辛さは想像もできないが、そんな中竹田先生役を演じきった彼女は本当に最後まで女優であり続けたのだな、と思った。

色々な掛け軸が見れたり、季節ごとに違うお茶菓子が見れたり、お着物を見れたり、目にも楽しいし笑えるし、難しいことを抜きにしてもすごく楽しめる映画だったのは間違いないのでよかったらぜひに。

そうだそうだ、お酒の話を忘れていた。日日是好日を見に行った新宿ピカデリーでこの日はハイボールを飲んだのでした。久しぶりにプライベートでの映画館だったもので、塩味とキャラメル味のポップコーンも買ってはしゃいでいたら、若干引かれた。

濃くて、美味しかったです。Mサイズで550円だから良心的。

ポップコーンは余しました。売店のお姉さんに紙袋を貰って持ち帰りました。

ちなみに、もう一度見たい理由に、ハイボールを飲んだせいで途中から尿意を我慢しながらの鑑賞になったため、という理由も挙げられます。

1日のサービスデーにでも行こうかな。

おしまい。

510:

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