2017.09.23 日フィル 第330回横浜定期演奏会 レポ

2017.09.23(土) の 日フィル第330回横浜定期演奏会「あふれる旋律美 不滅の名曲の魅力」に行ってまいりました。

会場は横浜みなとみらいホール

この日は炎のコバケンこと小林研一郎さんが指揮。プログラムも情熱的な曲が並びます。

<前半>メンデルスゾーン「ヴァイオリン協奏曲」ホ短調 op.64

ソリストは木島真優(きしままゆう)さん。初見ですが、チラシ通りの美しくすらっとした方。最初のフレーズから鳥肌が立ちました。

それは交響曲を聴くというよりも、オペラを見ているような、ヴァイオリンが歌のように聴こえるのは初めてで、熟練のオーケストラに支えられ華を咲かせるプリマドンナのような演奏でした。

コバケンもイメージとは違うグッとクールな指揮で、場のコントロール、ブレーキ役に徹するといった印象を受ける始まり。木島さんをすごく信頼しているのだな、と感じました。

木島さんが思うように振る舞えるよう指揮・オケのどちらもが全神経を集中させている緊張感と、聴衆もソリストも身を任せられる”プロフェッショナル”の演奏に漂う安心感、その中を華麗に泳ぐヴァイオリンの旋律…。「永遠に聴いていたい」そう思わせる心地よさです。

第1楽章の見事なヴァイオリンソロの後を引き継ぐようなフルートとオーボエ、そしてホルンの木管部隊にはうっとり。

激動の一楽章から続いて二楽章、三楽章。楽曲にもやさしさが滲み出てくるセクションですが、一楽章の尾を引いて、ヴァイオリンソロはたおやかに艶かしく、観衆を魅了しつづけます。

タクトが降り切る寸前、待ちきれんばかりにドッと拍手と歓声が。コバケンも満足気。木島さんはとても謙虚な方のようで「わたしが演奏できたのはみなさんのおかげです」といわんばかりに、オーケストラ、そして観衆に対するお辞儀を繰り返していました。

<後半>ドヴォルザーク 「スラブ舞曲」より第1番、第10番

後半からコバケンの曲の解説が入る流れに。

「炸裂しまくしたてるような(1番)」「一粒一粒、涙がこぼれるように 悲しみや憧れや祈りが込められたフレーズ(10番)」など、物腰柔らかな話し方の中に煌めく言葉たちが散りばめられ、観客とこれから演奏される楽曲との距離がグッと近くなったところで、指揮台の上へ。

第1番、全てのエネルギーが飛沫をあげて曲が始まります。指揮台からはみ出すつま先が印象的で、エネルギッシュを体現するような振り方でしたが、演奏はうらはらにどっしりと落ち着きを見せ、演奏によってはけたたましさを感じかねない楽曲に荘厳な美しさが宿ります。

前半でも息の合う演奏をされていたオーボエの首席奏者 杉原 由希子さんと フルートの首席奏者 真鍋 恵子さん。音だけでなく、演奏中の身体の揺れまでシンクロしていて、仲良し姉妹のように見える程でした。

第10番、有名な旋律です。甘く哀しいメロディとハーモニーに思わず涙が溢れます。夕暮れに紅色のコスモスが咲き乱れるような切ない景色が広がりました。

スメタナ「交響詩 我が祖国より《モルダウ》」

中学生の頃に合唱曲で親しんだ方も多いのではないでしょうか。
ほぼすべての重要なセクションをパートごとに演奏させながらの丁寧な前説があり、実に面白かったのですが、演奏は教科書通りというかあまり胸にくるものがなく本末転倒感が否めませんでした。

ただ、観客に情景をきめこまかに想像させ、楽曲との距離を近くする熱意と工夫が感じられたのでコバケンらしいなとも思います。滝、日フィル独自の解釈でチェロの弓をボディに当ててバチバチと音を出していました。確かに激しさを感じます。

カラヤン指揮のモルダウ、雄大さに圧倒されます。

チャイコフスキー「荘厳序曲《1812》」

のだめカンタービレでも取り上げられたことのある曲なので、ご存知の方も多いと思います。この曲の解説ではチャイコフスキーのパトロンであった、フォン・メック夫人への手紙を紹介しながら、チャイコフスキーの複雑な心境を話します。

ところで、このフォン・メック夫人、聞き覚えがあるなと思って調べてみると幼いころのドビュッシーの雇い主でもあり、彼女の娘に恋をしたことでその勤めを解雇したというチャイコフスキー以外の作曲家ともドラマのある人でした。ちょうどこの前読んでいた本に出てきたので、引っかかったのですね。

話は戻って、ロシアの聖歌とフランスの国歌「ラ・マルセイエーズ」のメロディを用いて戦況を描く分かりやすいつくりや、当時は大編成のブラスバンドが参加したという華々しいフィナーレに鳴り響く大砲の音を模した大太鼓や鐘など、キャッチーな魅力にあふれる曲ですが、フォン・メック夫人への手紙にはこう書いていたそうです。

「序曲はおそらく騒々しいものになる。私は特に愛情を持って書いたつもりはない」ーWikipediaより

散々な言い草ですが、作り手の意に反して、愛される名曲になりました。(もちろんフランス国民の方たちを除いて)

この日はみなとみらいホールのつくりを活かし、パイプオルガンの前にフィナーレ直前、トランペットとトロンボーンが登場する演出がありましたが、残念ながらトロンボーンが…盛大にずれていました…。間に観客席もあり、不規則に聞こえる鐘の音も混じるので呼吸を合わせるの、とても難しいチャレンジだったと思うのですが、今度はピタッと息の合った素晴らしい演奏が聴きたいです。

<アンコール> ドヴォルザーク「ヨモレスク」

よちよち歩きの赤子から、ポルタメントで恋を知り、青春時代、両親を無くすなどの悲しみを経て、若き日を思い出しながら成熟して行く人生という独自の解釈で演奏。日本人の郷愁を引き出す、素敵な演奏だったと思います。

まとめ

後半は少し物足りなさもありましたが、前半の演奏が素晴らしすぎたのでよし!
木島 真優さんは2月2日紀尾井ホールでリサイタルがあるそう。チケットの発売は10月7日。今後もぜひ演奏を聴きたいと思わせる、本当に素敵なヴァイオリニストだったので皆様も機会があれば足を運んでみてください。

それでは、また。

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