他国では用のない外出は罰金対象にまで発展しているコロナウイルスの脅威。わたしはもともとインドアなので、ずっと気になっていた床の汚れを重曹でピカピカにしたり、サイフォンコーヒーで淹れるコーヒーのおいしさに目覚めたりと自宅にこもりながらも、楽しい日々を送れていますが…。皆さんはいかがですか?
本日は今話題の「蘇」について。レンチンでの時短レシピとフライパンで1時間半混ぜ続けるレシピとではできあがりに差が出るのかな?ということでつくり比べてみました。
「蘇」とは
そもそも「蘇(そ)」って何よ?という方がほとんどだと思います。コロナの影響で給食の牛乳が流通せず困っている酪農家さんたちを助けよう~という動きと相まって、Twitterで一か月前くらいから話題となった古代食です。
詳細な文献が残っているわけではなく、正確なレシピは未だ不明のままらしいのですが、“乳を乾燥させて固形にしたチーズらしきもの”という情報から現代版「蘇」が誕生。
飛鳥~平安時代の貴族の嗜好品であったり、文武天皇の時代には「税」として収めるよう指定されていた「蘇」。そのやんごとなき味、いかほどのものか!というわけで、コロナでミッドサマーデートを断念した友人と彼との3人でLet’s 蘇!
※こちらの記事は色の違いを分かりやすくするために調理中・比較の写真のお色味は無調整でお送りしています。
フライパンVS文明の利器フル活用レシピ
当初はフライパンにつきっきりで8時間牛乳を煮詰める…というなかなか厳しいレシピが出発点だったのですが、ASAPが何にでも及ぶ昨今、「要は牛乳から水分を飛ばせばいいんでしょ?」という解釈が大幅に時間を短縮し、レンジも使いつつフライパンで2~3時間というのがこの頃の主流でした。
しかし、皆さんできあがりの色や質感がまちまち…!これは熱の入れ方でだいぶ味も変わってくるのではないか?と思い、先述のレンチン+フライパンとオールレンチンでやる最短レシピで蘇をつくり比べようというに至りました。
結果を先に書くと、おそらく「蘇」としての完成度は、フライパンで丁寧に撹拌し、均一に火を入れたほうが高くなります。レンチンだけだとどうしてもダマになっちゃうので、質感が失敗したブッラータ・チーズみたいになるのよ。これはこれでわたしはフレッシュ感があって好きでしたが。
材料は「牛乳」のみ
それでは早速「蘇」をつくっていきましょう。材料は「牛乳」以上!至ってシンプルです。お砂糖やカルピスを入れて作っている方もいらっしゃったのですが、出来上がった「蘇」を食べてみた人間としては牛乳だけの方がおいしい蘇が作れる気がします。
今回はいつもお世話になっております、明治の「おいしい牛乳」様を2本用意いたしました。ええ、900mlになって実質値上がり、容器が分解しづらくなってもどこまでもついていきます明治様…!
フライパンで蘇づくり
まずは900mlという大量の牛乳をなるべく素早くあっためる&あらかたの水分を蒸発させるために10分チンします。
フライパンルートでレンチンするのはこの最初だけです。容器が熱いので気を付けてね…!
フライパンに移して5分ほど、沸騰したら強中火くらいに落として焦げないようにかき混ぜます。もやもやしたものがでてきます。レシピによっては弱火で根気強くというのも見かけたのですが、「水分を蒸発させればよい」理論を採用して焦げないギリギリの強さで攻めます。
さらに10分ほど混ぜ混ぜ。変わり映えしないので飽き始めます。沸騰してからしばらくはシチューのようなよい香りがキッチンに立ち込めます。まだわたしたちの知っている牛乳からはさほど乖離していません。オールレンチンの蘇づくりの準備をしつつさらにまぜまぜ。
さらに8分後。変わり映えしないな~と思いつつも、写真を撮って見返していると、確実に液面が減っている…!そして木べらにもろもろっとしたものがくっつきはじめます。
フライパンで熱し始めて約30分。全体的にとろとろっとしたクリーム状になってきます。そしてかき混ぜているとフライパンの底が見え始めます!側面にくっつく牛乳をこそげ落としながらまぜまぜします。
調理中は気づかないのですが、3人で交代で混ぜていたので部屋の外から中に入ると立ち込める匂いに変化があることに気づきます。どこか酸っぱさ、発酵を感じさせるような籠った匂いに…。
フライパンの底が見え始めて4分後。混ぜなくても底が見えるくらい体積が減る…。だんだんテンションがあがってきます。テンションと反比例するかのように火は弱めてください、焦がしたら一巻の終わりやから。ここからの変化がすごく速いです。
優秀なティファールちゃんなので、ここまでは余裕できたのですが、この辺りからだんだん固まるスピードとの勝負になってきます。火を1メモリずつ落としながら、鬼の形相で混ぜる混ぜる。とろとろからねとねとという感触に変わってきます。木べらとゴムベラの両刀使いに。
カピカピのところがダマにならないようにとにかく手早く全体を何度も均一に混ぜ合わせる作業が続きます。
ひとつ前の写真から3分後、クッキー生地のような固さになり、まとまりました!最初はこれが固形になるなんて信じられない…と思っていましたが、この3分間の固まっていく様子は感動ものです!!!
火からおろして、ラップの上で成形します。円筒状のものをよく見かけたのですが、彼に尋ねると「カマンベールみたいなのがいい」と仰ったので、仰せのままにしてみました。
冷蔵庫で冷やし固める前に重さを測ってみると、900g(ml)の牛乳がなんと168gに…!すごい!凝縮牛乳だ~!
オールレンチンレシピはこのフライパンでやった比率を目安に加熱していきます。
オールレンジで蘇
家にある容器だと900mlだとたぽたぽすぎて危なかったので、800mlに減らしてレンジにかけます。
もろもろが増えてくるスピードはフライパンより早いような。「レンジでつくる時は固形になってきた部分を中心に集めるとよい」というツイートを見たのでその通りにします。
5分+5分で計36分経過。表面の蒸発が目立ち、膜が色濃く張っていて、チーズを焼いているようにもみえます。
液面がだいぶ減り、真ん中に集め続けていたもっこりが隠し切れなくなってきました。ここから1回のレンチン時間を3分以下に。
牛乳の油脂分がチーズのように濃い色を見せ始める。
真ん中のところにスプーンをさして上に引き上げるとモッツァレラのように糸をひく粘り気が…!この時点で食べた方がもしかしたらおいしかったかも。
我が家、レンジが冷蔵庫の上にあってスプーンで中をかき混ぜるのは身長的に彼しか無理なので、彼にまかせつつ、わたしと友人はのほほんとお茶を飲んでいると…ぼんっ!という爆発音とともに彼の「焦げた!!!」という逼迫した声がキッチンから…。ええ!?と駆け付けると、意外に大丈夫でした。安堵安堵。焦げると台無しなので。
はい、もう本当にここからは、小刻みにいきます。かなりめんどくさいです。
1分でも爆発するようになってくるので、2~30秒を5回やって完成ということにしました。トータル57分。ティファールが優秀すぎるのか、少しレンチンの方が時間かかってるやん!!!
オールレンジ蘇も成形して測定。フライパン蘇 168/900=18.667%、オールレンジ蘇 147/800=18.375%。
冷やし固めて4時間後の蘇を実食
左がフライパン蘇、右がオールレンジ蘇です。見分けがつくよう「レン」とマッキーで書いておきましたが、明らかに色が違う…。
蘇、開封します…!
フライパン蘇は黄色みがかっています。
オールレンジ蘇は赤身がかっています。
色の違いがなぜ出るのかな~と不思議に思っていると、料理研究家のサリーさんという方が「メイラード反応によるもの」と仰っていました。むむむ、化学…!このメイラード反応がでるのと出ないのとでは食味も大違いだそうです。
切り分けてみると見た目は完全にチーズ。ナイフで切りわけましたが、フライパン蘇は固いけど、オールレンジ蘇は柔らかい。断面も、フライパン蘇はなめらかで均一に攪拌されたのがよくわかりますが、オールレンジ蘇は不揃いでダマになっているのがわかります。
3等分に切り分けて実食。まずは何もつけずに食べてみます。全員一致で「フライパンで作った方が美味」という結果に。牛乳の甘み旨みが凝固しています。友人は「ミルクセーキをやわらかくしたみたいな」と言っていました。少し塩味も感じました。白ワインが飲みたくなる~!
レンジの方はダマが目立ち、冒頭にも書きましたが失敗したブッラータチーズみたいな感じです。よく言えばフレッシュ。水気があります。
続いてフライパン蘇に大分「森のはちみつ」、オールレンジ蘇に田圃風さんのル・レクチェジャムをつけて実食。うんま~い!フライパン蘇にははちみつがぴったりは本当やった…!酒~!酒もってこ~い!
オールレンジ蘇も、ジャムがおいしいからというのもありますが全然いけます。フライパン蘇がより「蘇」に近いならば、オールレンジ蘇はもはや蘇ではないという気もするのですが、水気があるからこそ、桃や洋ナシなんかと相性がよいです。
3日後の「蘇」の方がおいしかった
どれくらいが賞味期限というのも分からない蘇ですが、牛乳を加工した食品なので「なるべく早めに消費を」というコメントも。日々様子を見つつ、3日後にもう一度食べてみたのですが、こちらの蘇の方がおいしく感じました。
ラップで包んで保存しましたが、良い感じに乾燥により水分が飛んで、さらにおいしさが濃縮したのかな?。「焼き蘇」という食べ方もおいしい!と話題でしたが、これも完成した蘇を焼くので水分を飛ばす方法ですよね。
できあがったら日を置くか、トースター・グリルなどで追加でちょっと水分を飛ばす、というのがおいしく食べられるポイントかもしれません。
作り立ての時は白ワインと思っていましたが、日本酒と合わせてみてもGOODでしたよ。
結論:レンチンは20分、その後はフライパンで
今回作り比べてみて、「蘇」らしさを損なわないレシピの最適解はレンチンで10~20分、その後はフライパンで混ぜるというのがいいのではないかと思いました。
我が家はレンジが古いので、もしかしたら高性能なレンジをお持ちの方はレンチンでもっと攻めることができるかもしれませんが、後半、加熱中に拡販することができないというのは蘇づくりにおいては致命的と思います。
レンチンの方が熱くて容器さわれないし、爆発音のたびにヒヤッとするし、後半こまめに開け混ぜ閉めないといけず大変だな~というのが率直な感想です。
逆にうちはフライパンが割と新しめのティファールだったので焦げ付かずに最初のレンチンも合わせて約1時間で済んだというところがあるかもしれません。
ずっとこびりつく千円のフライパンを頑張って使ってたのですが、我が家はティファールが来てから劇的に料理が楽に!楽しく!思い通りにつくれるようになりました!ぜひぜひ~。
また、メイラード反応のところでも触れましたが、料理研究家のサリーさんという方が、詳細に蘇についてまとめてくれているので、さらに深く「蘇」を知りたい!求めている「蘇」をつくりたい!という方はご一読されるとよいと思います。
この週末に蘇を作ってみようという人向けに、蘇の作り方と、加熱条件による仕上がりの違いについてまとめました。
メイラード反応を考慮した「蘇」の作り方と加熱条件による味わいの違い|平松サリー @sarisally1 #note https://t.co/2gLdUfGru9
— 平松 サリー(科学する料理研究家・ライター) (@sarisally1) March 13, 2020
せっかく桜も咲いて日和もよい春の頃に、コロナというのはなかなか辛いものがありますが、ぜひこの機会におうちで楽しめる「蘇」づくりにチャレンジしてみてください!