本場でオペラ鑑賞というとイタリアやフランスを思い浮かべる方も多いかもしれませんが、ヨーロッパでオペラデビューをするなら断然チェコがおすすめです!
チェコの首都プラハでは、オペラを始め、ホールでのコンサート、教会コンサート、ストリートライブなど、毎日いろんな場所で音楽に接することができます。その質はとても高く、そして料金も驚くほど安い!日本だと敷居が高いと感じるオペラが、プラハでは気軽に、歴史のあるコンサートホールや劇場で楽しむことができます。
今回私たちは、モーツアルトが自らの作品「フィガロの結婚」を指揮したことで有名な由緒あるエステート劇場で、オペラ鑑賞をしてきました。
エステート劇場やプラハとのモーツァルトの関係、チケットの予約方法や鑑賞したオペラの様子などを詳しくお伝えしていきます。
エステート劇場って?
1783年にプラハ貴族のノスティッツ伯爵が建設した劇場で、当時はノスティッツ劇場と呼ばれていました。その後、貴族たちの共同所有となり、身分階級という意味のスタヴォフスケー劇場(英語名でエステート劇場)に改名されます。
こちらがエステート劇場の外観写真。ミントグリーンの壁が目を惹くかわいらしい建物ですね。
プラハ最古の劇場で、客席650あまりとこじんまりとした造りですが、桟敷席がぐるっと馬蹄形に配置され、金色の装飾と壁の青色の布地のコントラストが高級感を醸し出しながら優雅で落ち着いた雰囲気が漂っています。
当時ウィーンで活躍していたモーツァルトが1787年(竣工から4年後)にプラハを訪問した際、「フィガロの結婚」をエステート劇場で指揮して大喝采を浴び曲は大流行。同じ年の再訪問時にはプラハ市民のために「ドン・ジョバンニ」を作曲して初演が大成功しました。今でもモーツァルトのオペラ作品のほとんどはエステート劇場で上演されるそうです。
ミロス・フォアマン監督がモーツァルトの生涯を描いたアカデミー受賞作品「アマデウス」のオペラシーンがここ、エステート劇場で撮影されたことでも有名です。モーツアルトが実際に指揮した劇場がそのまま残っていて、300年以上の時を経て映画の撮影がそこで行われ、同じオペラが上演されるなんてすごくないですか?
プラハとモーツアルト
モーツァルトは1756年にザルツブルクに生まれました。その類稀なる音楽の才能で”神童”と呼ばれ、幼い頃から父親とヨーロッパを巡業し、成人してからは主にウィーンで活躍し人気を博しますが35歳の若さで亡くなります。
フィガロの結婚や魔笛などのオペラをはじめ、41の交響曲に27のピアノ協奏曲などなど、わずか35年の人生で900曲以上の膨大な数の作品を作曲する天才でした。
その一生を要約するとプラハとはあまり縁のないように見えますが、実は、モーツァルトはプラハとのつながりがとても深いのです。
ウィーンで売れっ子作曲家だったモーツァルトの噂がチェコ貴族の耳に入り、招かれることでプラハを訪問。それから4年間の内に5回もプラハに滞在しています。市内にはモーツァルトが滞在した貴族の館や、アマデウスのロケ地が今も随所に残っています。
また、モーツァルトが亡くなった時にも、ウィーンでは簡素な葬儀しか行われなかったことと対照的に、プラハでは聖ミクラーシュ教会で大規模な追悼式が行われたそうです。
プラハのオペラは安い!
オペラは高いんじゃないの?というイメージがありますが、プラハでのオペラ鑑賞をおすすめする理由はまず第一にチケットの値段の安さが挙げられます。席のランクで最も高い、ボックス席でも同じオペラの演目がパリやウィーンでは2~3万円するところ、プラハでは5,000円程度で鑑賞できちゃいます。安い席や立ち見席ではなんと1,000円を切る場合も!
オペラはオーケストラ、歌曲、バレエ、舞台芸術がミックスした総合芸術で、昔は貴族から大衆まで多くの人が楽しんだ最高の娯楽でした。オーケストラやバレエ、舞台などの単体ではなく、全てが一緒になったオペラは出演者や関係者が多く、舞台美術にも多額の制作費がかかっています。
規模が大きくなれば準備に数年、稽古に1ヶ月以上かかるのはザラ。そう考えると2万円前後でも安いのではと考えられますが、比べるとプラハは本当に破格です。今でもプラハ市民にはこうした芸術が娯楽として様々な人に楽しまれているということのあらわれでもありますね。
オペラ鑑賞は難しい?ドレスコードはあるの?
オペラ鑑賞ってなんとなく敷居が高いと感じていませんか?ドレスコードがあるのかな?と着ていくものにも悩みますね。
格式の高い上演では、ナイトドレスや燕尾服などの服装でないと浮いてしまうこともありますが、一般的な上演であればカジュアルフォーマルで大丈夫です(Tシャツ短パンなどくだけ過ぎているのはNG)。
こうしたクラシック音楽でのドレスコードやマナーについてはこちらの記事でまとめているので参考になさってください。
とはいえ、エステート劇場のような素晴らしい内装の由緒ある場所で、非日常的な世界に浸るわけです。せっかくなのでオシャレしていくのが◎。男性はジャケット、女性はワンピースがおすすめです。プラハの街はほとんど石畳なので、靴は無理せずバレエシューズなど、ぺたんこのパンプスがいいでしょう。
エステート劇場のブルーの内装に合わせて色を選ぶのも楽しいですね。服装にこだわると不思議と意識やモチベーションが高まって、ワクワク感をより一層感じることができます。
…なんて、大口を叩いていますが、私たちは旅行直前の友人の結婚式で着たドレスとスーツをそのまま持って行きました(笑)。
セリフやストーリーがわからない?
そうなんですよね。オペラは演劇的要素があるので、歌やセリフなどの言葉がわからないと内容が理解できません。しかもオペラで用いられる言語はほとんどがイタリア語かドイツ語。ちなみに、モーツァルトとサリエリという作曲家の対立の話は有名ですが、これにはモーツァルトがドイツ語派、サリエリがイタリア語派だったのも対立の原因の一つだといわれています。
話を戻して、もちろんヨーロッパ語圏でも、イタリア語やドイツ語がわからない人は沢山います。そこで、多くの劇場で、舞台の上下に英語の字幕が表示されるようになっているのです。ハイテク!
今回鑑賞したオペラの演目はモーツァルト作の魔笛でドイツ語オペラでしたが、エステート劇場にもきちんと字幕が用意されていました。
少し見づらいですが、エステート劇場では下の写真の赤く囲った部分に英語の字幕が表示されるようになっています。
でも舞台を見ながら流れる字幕を同時に見るのは正直大変。そんな時は思い切ってオペラが描く異世界に言葉なんて気にせずに入り込んでしまいましょう!美しい舞台装飾、心を揺さぶる旋律にうっとりしている間に、いつの間にか言葉を超えて理解できる物語があるはずです。
”総合芸術”が織りなす魅惑の世界へ!
とにかく何に注目していいかわからないという方は、まずは舞台装飾に目をやりましょう。前述したように、セリフがわからなくても舞台装飾や美術と耳に流れ込んでくる音楽だけで、十分に楽しめます。
こんなに広いんだ!とびっくりするくらいの舞台の奥行きや、上やら下やらから出てくる大道具、何枚もの幕を駆使する場面転換、豪華で華麗な衣装や斬新な舞台の美術など、ビジュアルを追いかけるだけでもワクワクが止まりません。
一つ例として舞台の裏側をお見せしましょう。写真はパリのオペラ座の模型(オルセー美術館所蔵)ですが、青く囲った部分が舞台です。奥行きが右側の客席の2倍以上ありますね。舞台上部には緞帳などを上げ下ろしする装置、さらに舞台下には舞台自体が上下する仕掛けがあります。
こんな大掛かりな仕掛けを駆使した舞台演出に、オーケストラのダイナミックな音楽が加わるスペクタクルなオペラの世界は、期待と不安が入り混じるあなたを、いつの間にか別世界に誘ってくれます。
もちろんストーリーがわかるに越したことはありません。事前にネットで演目を検索して登場人物を把握したり、あらすじに目を通すだけでも理解が全く違います。最近はYoutubeに全編アップロードされていたりもするので、全部をじっくり見なくても、BGM代わりにつけておくだけでもいいでしょう。セリフがわからなくても、ああこれがあのシーンなのか、と分かるだけでも嬉しいものです。
もう一つ、重要なポイントは眠たくなったら我慢せずに思い切って目をつぶってしまうこと!オペラの世界に浸りながら夢うつつに時を過ごすなんて、普段はできない贅沢です。あまり肩ひじ張らずに、リラックスして楽しみましょう。
エステート劇場のチケット予約方法
オペラの観劇の予約は 国立劇場National Theatre のホームページから行うことができます。日本語はありませんが、英語で閲覧することができ、オペラ鑑賞をしたい日にちの候補さえわかれば、後はその日にどんな演目がやっているか確認するだけです。
演目が英語表記で分からなければ、そのままコピってググりましょう。
後は画面のマップから好みの座席指定も簡単にできて、クレジットカードで決済OK。チケットを印刷して当日持参すればバーコード読み取りで入場できます。
実際の画面でご説明しましょう。
国立劇場HPでは、エステート劇場以外にもプラハ市内の4つの劇場のプログラムを購入できます。
下にスクロールすると日付形式で演目が表示されています。しかし、Drama=演劇(紫)、Ballet=バレエ(桃)、Opera=オペラ(緑)、Laterna magika=ラテルナ・マギカ(橙)と4種が一覧になっているので少々情報量が多いのが難点です。
オペラだけ探したい!という時はオペラのタブを選択し、「PROGRAMME AND TICHETS」ボタンでオペラの一覧になります。これも日付順に並んでいます。
ここで魔笛を選んでみましょう。「Die Zauberflote」が魔笛です。
演出や出演者、曲の情報の画面で「BUY TICKETS」のボタンを押します。
座席表が表示されるので、お好みの席を選択します。PCの場合は座席にカーソルを合わせると金額がポップアップ表示され、スマホは座席タッチで下に合計金額が表示されます。もちろんこの段階では何回でも修正が可能です。
いちばん高価なフロア席とボックスシート(バルコニー席)でも、1,290コルナ、なんと6,000円程度!そして2階バルコニー席では890コルナ、桟敷席では450コルナ、立見にいたっては230コルナとなんと1,000円程度…安すぎる…。
座席を決めたら次の画面でクレジットカード情報を入力→決済、最終画面でメールアドレスなどの情報を入力すれば完了です。
あとはメールで送られてくるリンクページから、チケットを印刷して当日持参すれば入場可能です。
次は実際のオペラの様子をご紹介します!