かれこれ4回目の参加となる今回。前回のワイン会から、展示やライブなどをやらせてもらって度々訪れていたので、なんだか暖簾をくぐる時の心境も緊張から我が家に帰って来るような安心感に変わっていました。それでもあいそさんの真髄、日本ワインと季節のお料理を存分に楽しめるワイン会はやはり特別です。
お邪魔すると席には女性ばかりで、華やかな雰囲気でワイン会がスタート。普段6名が定員のワイン会に今回は8名のおもてなしのため、さっそく大将と女将からメニューにはないサービスワインが大ボトルで1本!最初からなんて太っ腹なんでしょう!
月山ワイン山ぶどう研究所 / 村民還元 ヤマソービニオン
そして本日も見目麗しゅう前菜の数々…。
ワインは山形・月山で豊富にとれる山ぶどうを使い、舌の上でもころんと愛らしい丸いフォルムが感じられ、ぎゅっと凝縮されながら親しみやすいタンニンとコクを味わえる1杯。日本ワインらしい、彩度を抑えた味わいですがバランスがとてもよいので、万人ウケしそうです。
このワインに合うのは右から二番目のこんにゃくでしょう。メニューには載ってないものなのでちょこっとでしたが、濃いめの甘辛い味付けに唐辛子がピリッとして、田舎が山形なのでなんとも懐かしい気持ちにさせる味です。東北の人の味付けって、甘くてしょっぱいの。それが好きです。
ほどよく炊かれた里芋田楽に箸を移していると早くも次のワインが登場します。
まるき葡萄酒 / ル コリエ ドゥ ペルル ブラン ムスー2015
現存する最古のワイナリーとして有名なまるき葡萄酒。その歴史は明治10年まで遡ります。”フランスワインがフランス料理に合うように、日本の固有種である甲州ぶどうを使ったワインが和食に合わないわけがない”という強い想いの元、日本で初めてフランスへ醸造の技術を学びに渡ったのがまるき葡萄酒の創業者だそうです。
こちらの泡も、確かにその泡立ちから口の中でほどける様までとても繊細で、日本の手仕事を想起される、そう蚕の糸を繭から1本ずつ紡ぎだすような繊細さが日本人の味覚にマッチします。
この泡の繊細さからコクを引き出すおつまみ「柿の白和え スモークチーズ添え」。
フルーツの白和えは大将のお父様のお料理。そちらに息子さん(大将)はスモークチーズを添えちゃうんですねえ。憎いです。いい仕事してます。ふわっと白和え、みずみずしい甘さの柿、香り立つこっくりとしたスモークチーズ、その後にこの繊細な泡…もう!誰か止めて!なにこのトライアングル!チンチンチーン!いただきました!素晴らしい三角形です。
興奮冷めやらぬまま、泡のグラスを手に生ハム銀杏ゾーンへ(身体はずっと着席しています)。まずは今年初の銀杏。うん!まだピスタチオのような若さは残りつつも銀杏です!美味しい!クミンとお塩が味を持ち上げてる気がします。熟れて臭すぎても泡の個性を殺してしまうのでちょうどよい。泡によってどんどん研ぎ澄まされていく味覚に楽しさを覚え始めたところで、王道の生ハムへ。
くるっとひっくり返すと、生ハムだけでも充分やのに贅沢な旨味と苦味と潮味をはらんだ牡蠣ですよ。牡蠣。写真を見ていただければわかるかと思うのですが、ひっくり返した後に唾を飲み込んで銀杏にいってますからね。
うん、うん、素材がいいんだからもうなにもいうことない。この組み合わせがまずいわけないですよね。生ハムの塩気に加えて蒸した牡蠣の潮味の方がダブルできて泡に消えていくのもう恍惚以外の何者でもないです。
さて、先程から泡、泡と連呼してるこちらのワイン。ル コリエ ドゥ ペルル ブラン ムスー。カタカナで書くと呪文のようですが、エチケットを見ればわかるようにLe collier de perls / Blanc mousseux それぞれ書かれている場所が違いますね。説明が簡単なので後ろからいくと、ブラン ムスーとは、「白(Blanc)のスパークリング(mousseux)だよ」と大雑把にボトルの中身を説明しているわけです。
素敵なのが前者のLe collier de perls ル コリエ ドゥ ペルル。フランス語で「真珠の首飾り」という意味があり、泡の粒が真珠のようで、グラスを上から見ると首飾りのように輪になるところからこう表現されているそうです。
箸休めに大大将仕込みの卵焼き。アーモンドのコクがワインに合わせる前菜として違和感のない仕上げに一役買っております。
ヒトミワイナリー / ソワフブラン2016
お次のワインはこちら。Soif / ソワフとはフランス語で“渇き“の意味で、「喉の渇きを潤すワインを」というコンセプトで作られたテーブルワインだそう。乙女心くすぐる鳥のイラストが描かれたエチケットと朝焼けから切り取ったような美しいイエローが特徴的です。
濁りなので瓶の上部と下部で香りがだいぶ違うそうで、わたしはジャスミンと金木犀の花が混じったような香りを感じました。すっと尖って小花のように広がります。
国産のナイアガラとデラウェアを50%ずつ使用したもので、前半はマスカットやパイナップル、後半はデラウェアの梨やリンゴの香りがするそうです。味の違いはボトルをシェアする楽しさ、醍醐味の1つですね。
合わせるのはこちらのお椀。香り松茸・白身魚・自家製のカボチャ豆腐と豪華な椀種に吸い口には珍しいスダチ。濃い目のカツオのお出汁にパッと爽やかな香りが移っていきます。
松茸は歯応えもよく、白身魚には餡がかかりまるでお肉、カボチャ豆腐は前回のトウモロコシ豆腐同様とてもクリーミー。三者三様の椀種でとても満足感のあるお椀です。
ワインと交互にスルスルスル…と楽しんでると秋のエキスが次々に身体に流れ込んで来るような紅葉の舞う向こうに滝が落ちていくような景色が見られます。中々に楽しい体験でした。
タケダワイナリー / サン・スフル 赤 2013
ソワフブランを残しつつ次のワインとお料理へ。この濁り…既にわたし好みの匂いがプンプンしますなぁ!
今回なぜかフランス語講座みたいになっていますが、Sans Soufre サンスフルとはフランス語で「亜硫酸なし」という意味。赤ワインで頭痛になりやすい方は亜硫酸が原因なことも多いので、嬉しいワインですね!亜硫酸がなくても味を保てるぶどう自体の品質・手間暇がかかってくるので味も◎。山形県産ベリーA種100%無濾過仕上げのワインで力強いワインです。
強めのワインには濃く甘鮭の西京焼きを。味の変化を楽しめるチェダーチーズの醤油漬けとかんぴょうのピクルス。はぁ、もう最高。
ココファーム / Ashicoco 2015
ふわっふわっとしたわたげのような、綿菓子のような甘さから、柑橘系の皮の苦さでキュッとして、最後はやっぱりサトウキビのジュースのようなジューシーな甘さの余韻を残す夢心地なワイン。
ココファームのワインはどれも美味しくてなんだかやさしい味がする気がします。11/18,19の土日に収穫祭があるそうですよ。
そんなAshicocoちゃんに合わせるのはこちら。何か良くわかりませんね。拡大して見ましょう。
せせらぎポークのヒレと極みナスの天ぷらです。大根おろしには梨のみぞれと刻んだたくあんが混ぜてあって絶妙なハーモニーを奏でます。シャリシャリ…カリカリ…ジュワッ…ふわふわっ…とろとろ…。
今お送りしたのは極みナスのハーモニーです。せせらぎポークはご想像にお任せしますが、写真の通りこちらも絶妙な火の通り具合でウマい!噛めばジュワッと滲み出る肉汁をおろしがさらってゆき、舌に残る甘さがAshicocoの甘さを引き寄せるように手はグラスへ…脂がワインの酸を引き出し、新しい次元へと駆け上がります。美味しいの!美味しいしか言葉が出ないの!
ワイン会で一番わたしのツボをついてくるのはこの天ぷらのフェーズかもしれないと思いました。まる。
胎内高原ワイナリー / アッサンブラージュ ルージュ 2016
そしてあっという間に最後のワイン。胎内高原のワインは前回のワイン会で一番最初に出てきたのですが、乳酸菌のような酸と少し粘りのあるような納豆感?(褒め言葉です)が印象的すぎて、次はどんな味なんだろう…と固唾を飲んでしまいました。
ベリーの華やかでみずみずしい感じもあり、それを煮詰めたような甘さもあり、濃いけど重すぎない、受け口の広いワインだなと思いました。でもやっぱり納豆感があるんです。これなんだろうな…テイスティングテストあったら絶対分かると思う。おいしいんですよ!
フランス語講座(再) アッサンブラージュ / assemblage 組み合わせる、調合などの意味や現代美術の表現方法としても使われる言葉ですが、ワインでは「複数のブドウをブレンドした」という意味になります。ボルドーワインの特色でもあります。それぞれのブドウの良さで味に深みや複雑さが生まれ、親しみやすく美味しく感じられます。こちらのワインはメルローとツヴァイゲルトレーベをアッサンブラージュしています(ちょっと鼻につきますね)。
最後のお料理はサンマと大根のワイン煮。コクがありながらさっぱりとした味付けがワインの印象と重なります。
最後は女将のあびさん特製カボチャのパウンドケーキ。しっとりもっちり秋の甘さは赤ワインとも合うんだな〜。
ゆるゆると、でもあっという間に、今回も終わってしまったワイン会。秋の味覚をどっぷり堪能しました。次回は10/26(木)。わたしの分の席が空いてますよ!気になる方はぜひお早めにご予約してくださいね。
それでは、また。