JRの車内広告で話題!新潟駅から徒歩圏内【今代司酒造】で酒蔵見学とテイスティング(1)

新潟といえば酒どころ。そのイメージのとおり、新潟県の酒蔵の数は全国一の90蔵*を誇ります。そのうち新潟市には15の蔵がありますが、新潟駅から歩いて行ける酒蔵が1つだけあります。

2019年10月~12月までの新潟県・庄内地方デスティネーションキャンペーン「日本海美食旅」で、JR東日本の車内広告にも取り上げられている「今代司酒造(いまよつかさしゅぞう)」がその酒蔵です。

今代司酒造 入口

今代司酒造へのアクセスは、新潟駅から徒歩15分。タクシーなら5分くらいで着いてしまいます。

わたしたちも歩いていこうと企てていたのですが、見学した日は8月の猛暑日で、最高気温36度。こんな中歩いていたら死んでしまう…ということで、新潟の友人が車で迎えに来てくれたのを幸いに、車で移動することにしました。

蔵は栗ノ木バイパス(国道7号線)という広い通り沿いにあります。この道路は昔は栗ノ木川という湊町新潟の海運を支えていた川だったそうで、蔵の中に当時の写真が飾ってあります。通りから見える蔵の白い壁と煙突は、周囲とは時の流れが違う落ち着いた佇まいを感じさせ、小さいながらも歴史のある蔵の雰囲気を醸し出しています。

今代司酒造 杉玉

暖簾をくぐって中に入ります。迎えてくれるのは大きな杉玉、そして120年以上も蔵を支えてきたどっしりした梁。白い壁とこげ茶の梁が美しいコントラストを見せる店内は明るく広々としています。

今代司酒造 120年以上前の梁

正面の暖簾の先でスリッパに履き替え、中に入るといよいよ蔵見学のスタートです。

「新潟駅から歩いていける全量純米蔵」今代司

このキャッチコピーは今代司酒造の酒蔵見学案内に記載されているものです。

今代司は1767年(明和4年)の創業。太平洋戦争前後に米不足に陥るなど”酒”そのものの品質やイメージが低下した時代を乗り越えながらも試行錯誤を重ね、地元の風土を生かし、地元の米と水を使うという本来の酒造りにこだわり、2006年、新潟県内では戦後初の「全量純米蔵」となり、醸造アルコールや副原料の使用を一切行わない、数少ない酒蔵となりました。

今代司という名前は「今の時代を司る」という意味を持ちますが、今代司の代表である田中 洋介さんは「今の時代に合った酒の楽しみ方を創造する」という風に解釈し、酒を通じて食の楽しみ方や人のつながりを「むすぶ」ことを目指しているそうです。

今代司酒造酒蔵見学「暖簾をくぐるとそこは蔵です」

酒蔵見学は無料で予約も不要です。営業時間内の毎時0分ちょうどから開始で所要時間は30分ほど。英語ガイドもあり、私たちの時は外国の方が多かったため2グループに分かれ、見学ルートが被らないように出発しました。それだけ外国の方にも日本酒が人気になってきているんですね。

今代司 酒蔵内

暖簾をくぐってスリッパに履き替えて入った蔵の中は、明るく涼しい店内とは一転し、天窓からの採光だけで薄暗く空調がないのでとても蒸し暑かったです。入り口には凍らせたおしぼりとお水のサービスがありました。

夏場は日本酒造りはお休みのため、実際の作業を見ることはできませんが、見学は日本酒造りの工程にそって蔵の中を説明して回ってくれます。

ここからはごく簡単にではありますが、日本酒造りの工程に合わせて、見学の様子を追いかけていきましょう!

STEP 1
精米
酒米を磨いて外側を削る工程で、磨き度合いによって純米、純米吟醸、純米大吟醸と区分されます。
STEP 2
麹づくり
精米して蒸した酒米に麹菌をふりかけ、酵素を生産させる日本酒の味を左右する重要な工程です。

今代司酒造 酒造り説明

ここまでは口頭での説明でした。

STEP 3
仕込み
 酵母を増殖させた酒母と蒸米、仕込み水、麹をタンクに入れて発酵させる工程で、発酵した状態を「もろみ」といいます。

日本酒は「平行複発酵」という麹による「糖化」と酵母による「アルコール発酵」が同時に行われる、世界でも珍しい高度な発酵技術で造られます。バイオテクノロジーを駆使した蔵人の技と経験がものをいう世界で造られているんですね。

ずらっと並ぶ白いタンクが「サーマルタンク」という仕込み桶です。この中で精米後に麹を加えた日本酒の酛(元)がアルコール発酵をします。

今代司では昔からの手法による酒造りにもこだわっていて、木桶仕込みの日本酒造りにも取り組んでいます。使っているのは奈良の吉野杉。醸した日本酒には吉野杉の香りが移り、独特な風味がするそうです。今では木桶を作る職人さんも少なく、これだけ大きな木桶を作ってもらうのは大変だったそうです。人と比べるとその大きさがわかりますね。

STEP 4
酒しぼり
発酵が終了したモロミを圧搾して、酒と酒粕に分離します。

今代司では、写真の窓から左に見える縦に並んだ銀色の金属板にもろみの入った布袋を挟み、酒しぼりを行います。この時、金属板にぺたっと張り付いて残ったものが、粕汁や甘酒などに使われる酒粕になります。いつどのタイミングでしぼるのかは日本酒の味を決める重要な工程で、日本酒の種類はもちろん、天候や気温なども考慮して行うそうです。

STEP 5
ろ過、火入れ
酵母などをろ過し、熱により雑菌などを殺菌するのが火入れです。ろ過をしなければ「無濾過」、火入れを行わなければ「生酒」と呼ばれます。

いったん入り口に戻ります。こちらの大きな窯、中にはパイプが通っていて、このパイプにお酒を流しいれ、「火入れ」を行います。昔はこの窯の下で薪を炊きお湯をつくり、火入れをしていたそうです。

今代司酒造 黒く煤けた天井

窯の上の黒く煤けた梁や天井はその名残り。趣があります。

STEP 6
貯蔵、瓶詰め
しぼりたての酒を半年から1年ほど貯蔵し熟成させ、味をまろやかに調和のとれた味わいにします。

貯蔵は入り口の真正面にある「本蔵」のあるタンクで行います。こちらは緑色でした。

このタンクの中で美味しい日本酒が刻々と熟成されているのか…と思うと喉がなりました。

 

最後に、時代ごとに使われていた酒造りの道具の展示や、江戸時代に建てられた蔵が当時のまま保存されている場所などの説明を受けて見学は終了。日本酒造りを勉強しながら、実際に酒造りの現場に足を踏み入れることもできて、楽しく見学ができました。

今代司 酒蔵見学

今代司酒造 江戸蔵

見学後は入り口にある今代司の法被を着て記念写真がとれます。蔵人になった気分で木桶の前でポーズ!

さて、酒蔵見学の後はお待ちかねのテイスティングタイム。3種類だけなら無料で楽しめますが、1,000円で20種類近くのお酒がテイスティングできちゃうので、わたしたちは迷うことなくそちらを選択!テイスティングレポートはまた後日更新予定です。

蔵見学情報

見学料金:無料
定休日:年中無休(但し12月31日~1月3日のみ休業)
所要時間:約20分
駐車場完備(観光バス3台まで駐車可能)
予約:1名様~7名は予約不要
見学時間:9:00〜/10:00〜/11:00〜/12:00〜/13:00〜/14:00〜/15:00〜/16:00〜
8名様~40名様程度は事前予約
見学時間:9:30~/10:30~/11:30~/12:30~/13:30~/14:30~/15:30~

TRIP TIP

今代司酒造のある「沼垂(ぬったり)」地域は当時、酒蔵、味噌蔵、醤油蔵、納豆蔵などなど、発酵食品に関する蔵が立ち並ぶ街でした。実際に現在でも、今代司の200m向かいには「峰村醸造」という味噌を醸す蔵や「古町糀製造所」という蔵を改装した糀ドリンクとお食事が楽しめるカフェがあったりします。

酒蔵見学の前後に訪れてみてはいかがでしょうか。

国税局が発表している酒蔵マップ。いろんな酒蔵に訪れてみたいです。

*関東信越国税局管内「酒蔵マップ」より