【奈良】なら泉勇斎でみる奈良の酒、奈良の四季 2017ひやおろし編

関西のあたりに出向く際は、旅程が許す限り訪れている奈良の日本酒専門店「なら泉勇斎」。奈良のお酒のみを取り扱う酒屋さんでありながら、そのお酒が全て試飲できる角打ちがあり、50cc 200円~というコストパフォーマンスもあって人気のスポットとなっています。

2017年10月25日 紅葉の色づく観光シーズンを前にして、まだ比較的穏やかな雰囲気のならまち「もちいどセンター街」を抜け、「なら泉勇斎」へ。今年最後のひやおろしと奈良のお酒を堪能して来ました。


今回もいつも軽妙なトークで笑かしてくれる店主のケンちゃんが出迎えてくれます。

「稲刈りが終わるころには、ひやおろしからしぼりたての季節になっていくんだよね。春鹿と出世男のひやおろしはもう売り切れちゃったよ」と言いながら、差し出された季節限定酒のメニューがこちら。


いつもどことなく女性的で綺麗な味のする篠峯。秋のお酒はどんな味がするのだろうとワクワクしながら、篠峯の秋晴れとふた穂のひやおろしをいただきます。

篠峯 秋晴 純米 山田錦 / 千代酒造(株)


篠峯の秋晴れは、春に訪れた際に飲んだ裏シリーズのろくまるとは正反対の印象。ろくまるは桜吹雪が舞う川の情景に漂う艶やかさがありましたが、こちらは落ち着いて素朴で、つつましい美しさです。たしかに名前の通り、秋晴れの空にトンビが悠々と翼を広げ舞うような情景が目に浮かびます。広大でのどかな空。

ふた穂 雄町 純米吟醸 原酒 ひやおろし / 長龍酒造(株)


ふた穂はまさしく頭を垂れる稲穂のような、軽やかな質感の中にも確かな実り、力強さを感じます。するりとした重みが心地よく喉を滑り、しずく型の下の方にふわっとやわらかな甘みが広がるのです。

千代の松 清酒 純米無濾過原酒 八段仕込み 山乃かみ酵母 / 芳村酒造(株)

花粉なのかこの日朝から鼻が詰まっていた私は、いつもより鼻が効かなくて、とケンちゃんに伝えます。「次はそれでも絶対分かるの飲ませたる」と出してくれたのが精米歩合95%(!)の夢山水に奈良の大神神社で近年発見された山乃かみ酵母を使用した千代の松の純米酒。


古酒は独特な癖があって飲みにくさを感じることもしばしばですが、こちらはその癖を全く抜いて蜂蜜と水で薄めたような、見た目も味の色も明るい琥珀色。古酒ではないので古酒を味の表現に用いるのはどうかとも思うのですが、時を重ねた複雑味やとろっとした甘さなど、どうにも似ていました。ケンちゃんいわく”籾殻をとっただけ”のお米の出せる味なのかな?

御代菊 純米吟醸酒 水もと仕込 露葉風 山乃かみ酵母 / 喜多酒造(株)


同じく山乃かみ酵母を使用した御代菊の露葉風を使った純米吟醸酒もいただきます。こちらは60%の精白なので、千代の松の95%とは打って変わって豊かな甘みがありながらもフルーティーでスッキリ飲みやすかったです。


おつまみも200円から、奈良の日本酒に合うおいしいものが揃うなら泉勇斎。ここで胡麻豆腐を注文します。横のは山くらげ。コリコリしていて美味しい。

篠峯 八反 純米吟醸 中取り / 千代酒造(株)

今回は友人の昇格祝いに奈良のお酒を贈りたいというミッションもあり、ケンちゃんに相談します。友人の味の好みなどを伝えるとすぐに「篠峯の八反がいいんじゃない」というアドバイスをもらって、早速試飲。

華やかだけども上品なグリーン。篠峯は味とラベルに使われる色のシンクロ率が高いなぁ。旨味もあるけど爽やかで、だいぶキレを感じます。さすがケンちゃん、友人が気に入ってくれそうな”綺麗”な味のお酒に一発で辿り着きました!

ちょうどこの時20代前半くらいの女性がひょこっと顔を覗かせ「4人でお鍋するんだけど…」と同じように相談に来て、ケンちゃんに薦められたお酒を買って帰るというシーンに出くわしました。そしてこの八反に辿りつくまでと同様、すぐさまお客さんの要望に合うお酒をすぐに感知して提供するその一連の流れに、トークや人柄のひょうきんさで隠されているプロ意識が滲み出ていたように思います。わずか5分でお酒を抱え帰って行った女の子のニコニコとした表情を横目で捉え、幸せのおすそ分けをいただきました。

このプロ意識が、なら泉勇斎が遠方から来た旅行客はもちろん、地元の方にも愛され信頼される理由なんでしょうね。

百楽門  純米吟醸  / 葛城酒造(株)


最後はしっかりめのお酒で〆たいなと思い百楽門の純米吟醸。冷やでもゆるやかな甘みと旨みが口の中を心地よく湿らす美味しいお酒ですが、私は常温かぬる燗で飲みたいかな…と思って裏を見たら温度別ガイドが。専門的な知識や飲んだお酒の数はまだまだ足りませんが、一般的なそれや酒蔵さんの説明と噛み合う部分が感覚であると素直に嬉しいものです。

お持ち帰りの酒選び

今回は年越しも控え、お祝いとは別に3本持ち帰るという使命があったので、ここで送料を確認するとなんと東京へ送るなら12本まで840円。思ってたよりだいぶ安い…!八反にはお祝いの熨斗もつけてもらい、自宅用には千代の松、ケンちゃんのおすすめで三日踊りと最後に飲んだ百楽門を送ってもらうことにしました。

「なら泉勇斎」店名の由来を聞いてみた


「最近ブログを始めて」と言ったらなんだか笑われてしまいましたが、折角なのでお話を聞きたいなと思い、お店の名前の由来を伺いました。

なら泉勇斎(ならいずみゆうさい)の「勇斎」はこの区画の屋号を受け継いでいて、初代はハンドバッグの販売店、次は漆器の製造販売店だったそうです。なら泉の”泉”はお酒のこと。一瞬なんて読むのかな?と首を傾げてしまう店名も訳を聞くとスッと覚えることができますね。


日本酒は四季折々の味があってとても楽しいです。2〜3週間後には一気に季節のお酒のメニューが”しぼりたて”に代わるそうです。それと同時にこれから京都・奈良は紅葉の季節、おでかけの際はぜひ、なら泉勇斎に立ち寄って見てください。

なら泉勇斎の情報

店名:なら泉 勇斎
電話:0742-26-6078
営業時間:11am-20pm
定休:木曜日 ※祝日は営業
住所:〒630-8372 奈良県奈良市西寺林町22
URL : http://www.naraizumi.jp/

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